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スタッフブログ

民法相続編の改正④

2020.01.08

 

こんにちは、税理士の枌です。
民法相続編改正シリーズも今回で4回目となりました。
今回からは「遺産分割に関する見直し」をテーマに解説します。
民法では、被相続人の遺産分割に関しても色々な規定が存在しています。
その中で、今回の改正では3つの大きな改正が入りました。
①婚姻期間が20年以上の夫婦間で行われた居住用不動産に関する持ち戻し免除
②遺産である預貯金に関する仮払等制度の創設
③遺産分割前に共同相続人が処分した遺産がある場合の不公平を是正するための制度の創設
まずは「婚姻期間が20年以上の夫婦間で行われた居住用不動産に関する持ち戻し免除」について解説することにしましょう。
非常に仲の良い、いわば「おしどり夫婦」が一組いたとします。
二人は夫名義の自宅に住んでいました。
夫は妻に何か贈与したいと考えていたところ、贈与税には「贈与税の配偶者控除」といって、婚姻期間が20年以上の夫婦の間では自宅の贈与は2000万円まで贈与税が課税されない事を知り、この制度を使って自宅を妻に贈与することにしました。
この自宅の贈与から5年後、夫が亡くなり遺産を妻と3人の子供で分割することになりました。
妻は自宅を生前に贈与されていたのですが、それだけでは夫亡きあとの生活ができないので、当然ですが預貯金も相続したいと考えます。
しかし、3人の子供は皆口を揃えてこう言いました。
「お母さんは、生前にお父さんから自宅を贈与されているんだから、これ以上相続するのは不公平だ。だからお金は自分たちが欲しい。」
父親が残してくれた遺産をまだ元気な母親を差し置いて子供が欲しがるなんて話は、道徳的にどうかとは思いますが、法律的には至極真っ当な主張なんですね。
確かにお母さんは、生前に自宅の贈与を受けているわけですから、配偶者として相続する分の前取りがあると考えるのです。
しかし、お父さんはお母さんに自宅を贈与したのは「相続の前渡し」ではなく「長年の感謝の気持ち」を表しただけなのに、何故このようなことになったのでしょうか。
それは、民法903条の「持ち戻し」という規定があるからなのです。
民法第903条(特別受益者の相続分)
1.共同相続人中に、被相続人から、遺贈を受け、又は婚姻若しくは養子縁組のため若しくは生計の資本として贈与を受けた者があるときは、被相続人が相続開始の時において有した財産の価額にその贈与の価額を加えたものを相続財産とみなし、前三条の規定により算定した相続分の中からその遺贈又は贈与の価額を控除した残額をもってその者の相続分とする。
この規定により、お母さんが生前に贈与を受けた自宅分については、一度相続財産に足し直して遺産の全体像を想定し、生前に贈与をうけた自宅が全遺産の2分の1を超えていたら、配偶者であるお母さんは既に法定相続分の財産を取得していると考えるのです。
恐ろし規定だと思う方もいらっしゃるかもしれませんが、仮に生前贈与を受けた人が長男で、他の相続人が次男と三男だとすると、やはり「持ち戻し」がないと不公平になってしまう事は容易に想像できますよね。
そこで、新しい民法ではこのように定めました。
「婚姻期間が20年以上の夫婦間で贈与された自宅については、贈与をした側(今回は夫側)が死亡したときには、遺言で持ち戻し免除の意思表示があったものと推定する」
先にご紹介した民法903条には続きがあり、第3項では次のように規定されています。
3.被相続人が前二項の規定と異なった意思を表示したときは、その意思表示は、遺留分に関する規定に違反しない範囲内で、その効力を有する。
つまり、遺言で「生前に妻にプレゼントした自宅については、俺の相続の時は持ち戻しを免除するよ。愛しているよ、ハニー」と書いたときは、自宅の生前贈与は持ち戻さないで遺産分割をすることができるんですね。
これを、遺言が無かったとしてもその意思表示があったのだと推定するというのが今回の改正でございます。
長々となりましたが、ここでも配偶者の権利を守るための改正が入っているんですね。
それだけ夫が死亡後の妻という存在が、他の相続人から虐げられてきたという事なのでしょうかね。

こんにちは、税理士の枌です。

 

民法相続編改正シリーズも今回で4回目となりました。

今回からは「遺産分割に関する見直し」をテーマに解説します。

 

民法では、被相続人の遺産分割に関しても色々な規定が存在しています。

 

その中で、今回の改正では3つの大きな改正が入りました。

①婚姻期間が20年以上の夫婦間で行われた居住用不動産に関する持ち戻し免除

②遺産である預貯金に関する仮払等制度の創設

③遺産分割前に共同相続人が処分した遺産がある場合の不公平を是正するための制度の創設

 

まずは「婚姻期間が20年以上の夫婦間で行われた居住用不動産に関する持ち戻し免除」について解説することにしましょう。

 

 

非常に仲の良い、いわば「おしどり夫婦」が一組いたとします。

二人は夫名義の自宅に住んでいました。

 

夫は妻に何か贈与したいと考えていたところ、贈与税には「贈与税の配偶者控除」といって、婚姻期間が20年以上の夫婦の間では自宅の贈与は2000万円まで贈与税が課税されない事を知り、この制度を使って自宅を妻に贈与することにしました。

 

この自宅の贈与から5年後、夫が亡くなり遺産を妻と3人の子供で分割することになりました。

 

妻は自宅を生前に贈与されていたのですが、それだけでは夫亡きあとの生活ができないので、当然ですが預貯金も相続したいと考えます。

しかし、3人の子供は皆口を揃えてこう言いました。

「お母さんは、生前にお父さんから自宅を贈与されているんだから、これ以上相続するのは不公平だ。だからお金は自分たちが相続する。」

 

 

父親が残してくれた遺産をまだ元気な母親を差し置いて子供が欲しがるなんて話は、道徳的にどうかとは思いますが、法律的には至極真っ当な主張なんですね。

 

確かにお母さんは、生前に自宅の贈与を受けているわけですから、配偶者として相続する分の前取りがあると考えるのです。

しかし、お父さんはお母さんに自宅を贈与したのは「相続の前渡し」ではなく「長年の感謝の気持ち」を表しただけなのに、何故このようなことになったのでしょうか。

 

それは、民法903条の「持ち戻し」という規定があるからなのです。

 

民法第903条(特別受益者の相続分)

1.共同相続人中に、被相続人から、遺贈を受け、又は婚姻若しくは養子縁組のため若しくは生計の資本として贈与を受けた者があるときは、被相続人が相続開始の時において有した財産の価額にその贈与の価額を加えたものを相続財産とみなし、前三条の規定により算定した相続分の中からその遺贈又は贈与の価額を控除した残額をもってその者の相続分とする。

 

 

この規定により、お母さんが生前に贈与を受けた自宅分については、一度相続財産に足し直して遺産の全体像を想定し、生前に贈与をうけた自宅が全遺産の2分の1を超えていたら、配偶者であるお母さんは既に法定相続分の財産を取得していると考えるのです。

 

恐ろし規定だと思う方もいらっしゃるかもしれませんが、仮に生前贈与を受けた人が長男で、他の相続人が次男と三男だとすると、やはり「持ち戻し」がないと不公平になってしまう事は容易に想像できますよね。

 

そこで、新しい民法ではこのように定めました。

「婚姻期間が20年以上の夫婦間で贈与された自宅については、贈与をした側(今回は夫側)が死亡したときには、遺言で持ち戻し免除の意思表示があったものと推定する」

 

先にご紹介した民法903条には続きがあり、第3項では次のように規定されています。

3.被相続人が前二項の規定と異なった意思を表示したときは、その意思表示は、遺留分に関する規定に違反しない範囲内で、その効力を有する。

つまり、遺言で

「生前に妻にプレゼントした自宅については、俺の相続の時は持ち戻しを免除するよ。愛しているよ、ハニー」

 と書いたときは、自宅の生前贈与は持ち戻さないで遺産分割をすることができるんですね。

 

これを、遺言が無かったとしてもその意思表示があったのだと推定するというのが今回の改正でございます。

 

長々となりましたが、ここでも配偶者の権利を守るための改正が入っているんですね。

 

それだけ夫が死亡後の妻という存在が、他の相続人から虐げられてきたという事なのでしょうかね。

 

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