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民法相続編の改正⑦

2020.01.20

 

こんにちは、税理士の枌です。
民法相続編の改正シリーズも、今回で7回目です。
今日のテーマは「分割前における遺産処分があった場合の遺産の範囲の改正」です。
いつものように、モデルケースで解説しましょう。
(モデルケース)
被相続人:父
相続人:長男(父と同居で非常にがめつい)
次男(父とは同居していない、長男と仲が悪い)
父は生前に長男2000万円を生前贈与(特別受益に該当)しています。
遺産は預貯金が2000万円あったが、父死亡後に長男が1000万円を無断で引き出しており、遺産分割協議時点では1000万円しか残っていません。
遺言が無かったとして、次男は今回の申告でいくら手にすることができるでしょうか?
今回のポイントは二つ
〈ポイント①〉父から長男に生前2000万円の贈与があったこと
〈ポイント②〉長男が遺産分割前に1000万円を引き出していること
まず改正前の民法で計算してみましょう。
遺産分割のルールとして、遺産分割の対象となる財産は
①被相続人(今回は父)死亡時に父に属していた財産で、かつ
②遺産分割時に存在している財産
です。
つまり、相続開始後で遺産分割前に処分されて無くなってしまった財産は、遺産分割の対象外です。
なので、〈ポイント②〉の「長男が遺産分割前に引き出した1000万円」は遺産分割の対象となりません。
よって長男が相続できる遺産は
(遺産分割時の預貯金1000万円+持ち戻される生前贈与2000万円)×1/2-(特別受益2000万円)
=▲500万円<0 ⇒0円
反対に次男が相続できる遺産は
(遺産分割時の預貯金1000万円+持ち戻される生前贈与2000万円)×1/2
=1500万円<1000万円(遺産分割時の預貯金残高) ⇒1000万円
つまり次男は、「権利として1500万円をもらえるが、実際には1000万円しか残っていないので、遺産としては1000万円しか手に入れられない」という事になります。
これでは次男は面白くありません。
ということで、長男に対し生前の預貯金引出について「損害賠償請求及び不当利得返還請求」の訴えを起こして、一部でも取り戻すことになります。
この場合、長男の無断引出額1000万円の内、次男の持ちうる法定相続分相当額である500万円が取り戻しの対象となります。
ということで、二男は
①遺産分割で1000万円(残った預貯金全額)
②長男から取り戻した500万円
の合わせて1500万円をゲットできるということですね。
一件落着と言いたいところですが、ここに罠があります。
もし長男が1000万円の無断引き出しをしなかったらどうなっていたでしょうか。
この場合、遺産分割時に残っている財産は2000万円、長男には生前贈与としての特別受益が2000万円です。
よって二人の取り分は
(長男)
(遺産分割時の預貯金2000万円+持ち戻される生前贈与2000万円)×1/2-(特別受益2000万円)
=0円
(次男)
(遺産分割時の預貯金2000万円+持ち戻される生前贈与2000万円)×1/2
=2000万円
となります。
あれれぇ、長男がネコババする前と比べて次男の取り分が500万円も増えているではありませんか。
これが、今までの民法が抱える問題でした。
改正前は「特別受益のある長男が遺産分割前に遺産の一部を処分しても、それを元に戻さなければならない」というルールが無かったんですね。
なので、こんな不都合が生じていたんです。
この問題を解決するために、改正後の民法では次のようなルールが定められました。
「遺産分割前に遺産が処分されても、共同相続人の全員の同意により、その処分された遺産が遺産分割時に遺産として存在するものとみなすことができる。」(民法906条の2①)
「もし、遺産分割前の遺産処分が共同相続人の一人又は数人によって行われたときは、、その者の同意は要しないで上記の同意は成立する」
つまり、ネコババした長男は蚊帳の外において、次男だけで長男のやらかした遺産分割前の預金引出額1000万円を一旦遺産に加えて計算ができるということです。

こんにちは、税理士の枌です。

 

民法相続編の改正シリーズも、今回で7回目です。

今日のテーマは「分割前における遺産処分があった場合の遺産の範囲の改正」です。

 

いつものように、モデルケースで解説しましょう。

 

(モデルケース)

被相続人:父

相続人:長男(父と同居で非常にがめつい)

次男(父とは同居していない、長男と仲が悪い)

 

父は生前に長男2000万円を生前贈与(特別受益に該当)しています。

 

遺産は預貯金が2000万円あったが、父死亡後に長男が1000万円を無断で引き出しており、遺産分割協議時点では1000万円しか残っていません。

 

遺言が無かったとして、次男は今回の申告でいくら手にすることができるでしょうか?

 

 

今回のポイントは二つ

〈ポイント①〉父から長男に生前2000万円の贈与があったこと

〈ポイント②〉長男が遺産分割前に1000万円を引き出していること

 

まず改正前の民法で計算してみましょう。

 

遺産分割のルールとして、遺産分割の対象となる財産

①被相続人(今回は父)死亡時に父に属していた財産で、かつ

②遺産分割時に存在している財産

です。

 

つまり、相続開始後で遺産分割前に処分されて無くなってしまった財産は、遺産分割の対象外です。

 

なので、〈ポイント②〉の「長男が遺産分割前に引き出した1000万円」は遺産分割の対象となりません。

 

よって長男が相続できる遺産は

(遺産分割時の預貯金1000万円+持ち戻される生前贈与2000万円)×1/2-(特別受益2000万円)

=▲500万円<0 ⇒0円

 

反対に次男が相続できる遺産は

(遺産分割時の預貯金1000万円+持ち戻される生前贈与2000万円)×1/2

=1500万円<1000万円(遺産分割時の預貯金残高) ⇒1000万円

 

つまり次男は、「権利として1500万円をもらえるが、実際には1000万円しか残っていないので、遺産としては1000万円しか手に入れられない」という事になります。

 

これでは次男は面白くありません。

ということで、長男に対し生前の預貯金引出について「損害賠償請求及び不当利得返還請求」の訴えを起こして、一部でも取り戻すことになります。

 

この場合、長男の無断引出額1000万円の内、次男の持ちうる法定相続分相当額である500万円が取り戻しの対象となります。

 

ということで、二男は

①遺産分割で1000万円(残った預貯金全額)

②長男から取り戻した500万円

の合わせて1500万円をゲットできるということですね。

 

 

一件落着と言いたいところですが、ここに罠があります。

もし長男が1000万円の無断引き出しをしなかったらどうなっていたでしょうか。

 

この場合、遺産分割時に残っている財産は2000万円、長男には生前贈与としての特別受益が2000万円です。

よって二人の取り分は

 

(長男)

(遺産分割時の預貯金2000万円+持ち戻される生前贈与2000万円)×1/2-(特別受益2000万円)

0円

 

(次男)

(遺産分割時の預貯金2000万円+持ち戻される生前贈与2000万円)×1/2

2000万円

 

となります。

 

 

あれれぇ、長男がネコババする前と比べて次男の取り分が500万円も増えているではありませんか。

 

これが、今までの民法が抱える問題でした。

改正前は「特別受益のある長男が遺産分割前に遺産の一部を処分しても、それを元に戻さなければならない」というルールが無かったんですね。

 

なので、こんな不都合が生じていたんです。

 

この問題を解決するために、改正後の民法では次のようなルールが定められました。

「遺産分割前に遺産が処分されても、共同相続人の全員の同意により、その処分された遺産が遺産分割時に遺産として存在するものとみなすことができる。」(民法906条の2①)

「もし、遺産分割前の遺産処分が共同相続人の一人又は数人によって行われたときは、、その者の同意は要しないで上記の同意は成立する」

 

つまり、ネコババした長男は蚊帳の外において、次男だけで長男のやらかした遺産分割前の預金引出額1000万円を一旦遺産に加えて計算ができるということです。

 

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